よんだほん

本の内容をすぐ忘れちゃうので、記録しておくところです。アフィリエイトやってません。念のため。

シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成

 実は発売当初(2020年ごろ)、いわゆる「話題の図書」的な平積みコーナーに置かれていたころには購入していたのだが、今更の読了となってしまった。当時、ある程度は読み進めていたのだが、どうにも自分の知識不足で理解が及ばなかったことに加えて、著者の少々もったいぶったような記述ぶりのクセも相まって、読みきれず積んでしまったままになっていた。

 それからたかだか2~3年しか経っていないのだが、その間に、自分は「G検定」を通じてAIの基本的な仕組みを知ったし、仕事はマクロ視点のビジョン作りに変わったことで、視野を幅広く持つようになった。世の中的にはコロナの隆盛があり、生成AIが盛り上がったりと、様々な動きがあった。今現在のこの立ち位置の自分ならば、この本の内容を受け止められるのではと思い、今一度読んでみることにした。

 実のところ目からウロコの真新しい視点があったわけではないのだが(当時から成長し、内容を理解できるようになったからこそ、と思っている)、まさに今自分がミッションとして与えられている事柄、そしてそれに対して自分が持っている複数のピースが、著者の視点、言語化でまとめられていると感じた。

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 本書は、コロナや生成AI前に着想している内容であることに留意する必要があるが、その内容は2023年現在でも当然に通用する。タイトルのとおり国家視点での発想・提案が基本ではあるが我が国における「人」という資源を、「どのように、よりよく活かすか」が主題である。

 AI×データ社会の到来によって「決まったことをしっかりとこなす」については、マシンがフォローアップしてくれるようになった。こうした時代の到来の中、将来を生き抜く人材のありようについて、以下のようなことばで表現している(目についたものを抜粋)。
 ・ヒトにしかできないこだわりや温かみの実現
 ・未来を意志を持って描く
 ・領域を超えたものをつなぎデザインする力
 ・人に伝えられる
 ・問題を正しく見極め、解決できる
 ・自分なりに見立て、それに基づき方向を定める
 ・何をやるかを決める
 ・問いを立て、人を動かす
 ・論理的かつ建設的にモノを考える
 ・ビジネス力、データエンジニアリング力、データサイエンス力

 特に「未来を意志を持って描く」ことは、非常に難しいことではあるが大事なことである。課題解決には「あるべき姿が明確なタイプ」と「あるべき姿から設定するタイプ」がある。前者は、自分の理解では、製造工程等における改善活用の領域感に近いのではと思っていて、先程のとおり決まったことをしっかりとこなすという意味で、もはや人間は勝てない。しかし現状のAIは、無からあるべき姿を設定する力を有していないので、後者こそが人に求められているスキルであるといえるだろう。

 未来を描くことも含めた先述の人材の有り様を身につけるにあたっては、やはり教育システムを変えていくことが必要だ。先般の「21世紀の教育」の内容も然りだが、やはり我が国の教育は(自分自身が義務教育を受けたころと根本的な部分で変わっていないという前提であれば)質的に立ち遅れているといわざるをえないのだろう。加えて本書では、我が国は科学技術・教育投資が少なすぎるので、国家としてのあらゆるリソースの配分量を見直す必要があるという提案がなされている。すなわち教育が量的にも立ち遅れているということである。

 shibadog-john.hatenablog.com

 ただ2023現在、自分の観測範囲では既にこうした「人ならではの、人だからこそ」という視点で人材育成に関するキーワードは既に溢れているように見える。社会システムへの実装が追いついていないだけで、この本に限らず、すでに多くの人々が論じており認識しており、一般的見解になっている(なりつつある?)ものだと思っている。

 そもそも教育とは、一人ひとりの人生を豊かにする(今風にいえばウェルビーイング)活動であり、またそれらの総体としての国という共同体を、ポジティブに変革していくという意味で、未来を創るための最も基礎的な活動だと思う。一方でいかに我が国のシステムが、半世紀も前の右肩上がりだったころうまく行っていた(のかもよくわからないが)システムを亡霊のように未だ使っているのか。しかし皆頭ではわかっているはずなのに、現状を変更できない。

 それでも「人ならでは」の認識が高まっている中、これから少しずつでもより良く変化してことを期待している。また自分も自らの仕事を通じて、価値観の共有に微力ながらコミットし、社会変革の一助となれるよう、精進したい。