よんだほん

本の内容をすぐ忘れちゃうので、記録しておくところです。アフィリエイトやってません。念のため。

世界はあなたを待っている―社会に持続的な変化を生み出すモラル・リーダーシップ13の原則

 社会起業家を支援するファンド「アキュメン」のCEOであるJacqueline Novogratzが、これまでの半生で経験した具体的かつ生々しい実務、実体験、実例をベースに「社会変革のための14の鉄則」を紹介していくもの。
 
 たまたま自分のパートナーの書棚にあるのを発見したもので、自分の意志では手にとっていたかどうか分からない。ゆえに、あえて読んでみることにした。
 
 以下、印象の強い内容、事柄にフォーカスして記録しておく。

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1)一般的慣行の落とし穴にはまらない

 一般的慣行に従うことが善の力になるときと、そうならずに私たちの良心を圧殺してしまうときを知らなくてはならない。進学者ラインホルド・ニーバーは、「集団は個人よりも反倫理的だ」と書いている。私たちは、自分より大きなシステムに責任を押し付けることによって、「歩調を合わせる」しか選択肢はなかったのだと自分を納得させがちだ。けれども、変化を生み出すという夢に従って行動するなら、より良いシステムをデザインするために必要な関係を構築しながらも、孤立をいとわない根性を見出さなければならない。

 組織人として普段行動していく中で、知らず知らず無意識のうちに、こういった発想に陥っていないか。このためには、やはり自分の仕事とはなにかを心に刻んでおかないといけない。3人レンガ職人の逸話のように、自らのミッションを自らに落とし込み、行動原則にしていかなければならない。

2)市場の力に惑わされず、それを活用する

投資は手段であって目的ではない。市場が失敗し、援助が届かなかったところに、あえて足を踏み入れること。資本を私たちのために機能させるのではって、資本に支配されるのではない。

 人は「よりよくなりたい」という欲を持つからこそ、新たな価値を、ビジネスという持続可能な形で生み出すことができる。自由という原動力がなければ、社会へのインパクトは生まれない。だからこそ、個人の自由な活動は限りなく尊重されるべきだ。ただしかし現状は、単に個人の欲望を叶えるだけの、周囲や自然環境との調和を図らないシステム(要は市場の失敗ということだが)と成り果てていることが問題だろう。
 なお、このことについて、著者は金銭的リターンではなく、ミッションを第一義的目的に据えるよう説いている。しかし調和を原則に置きながらも、自由という原動力を市場経済で増幅していくことは、システムを使う人間側に倫理観と忍耐がなければなし得ないことなのか。その他に達成手段はないのか。

3)可能性を引き出す物語を語る・マニフェスト

物語が重要な意味を持つのは、影響力があるからだ。どの物語を選ぶかによって、どういう自分になるかがしばしば定義される。

 自分自身、他者、あるいは社会、全てにおいてポジティブなナラティブと、ネガティブなナラティブは混在している。そのことは必ず謙虚に受け止めなければならない。どちらかの視点だけを認識してもいけないし、ある1つのナラティブに固執してはいけない。ネガティブなものを選べば、自然とネガティブな存在に定義されてしまう。リーダーの努めは、混在しているものを認識した上で、人を動かすために、チャンスを語らなければならない。

 価値観を言葉にすることで行動を導き、コミュニティの結びつきを強めることができる

 マニフェスト、すなわち行動原理・価値観という形でナラティブを整理することも重要だ。自分、あるいは組織は、何を実現したいのか?社会に対してどのようなインパクトを生み出したいのか?明文化した上で、手段を整理する必要があるだろう。翻って自身を考えたとき、自分が所属する組織では、ミッションがあまりにも当たり前と思われすぎていて、逆に誰もすり合わせ、答え合わせをしていないように思える。本当に皆で同じ方向を向いているのか、実際には誰もわかっていないのではないか。

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 社会起業に対して理想主義だと冷笑することは簡単だが、理想を掲げなければ何事もなすことはできない。著者は、まさに血のにじむような実体験からそれを証明してくれている。一方で、そうした倫理と忍耐力を持ち、理想を掲げゲームチェンジを仕掛けられるプレイヤーは、どう生み出していくのか。やはり教育か。きっと一代での劇的な変革はない。何代も重ねて、徐々に倫理レベルとでもいうべきものを、人類という種全体で底上げしていくしかないのかもしれない。