よんだほん

本の内容をすぐ忘れちゃうので、記録しておくところです。アフィリエイトやってません。念のため。

持続可能な地域のつくり方――未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン

持続可能な地域のつくり方――未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン

持続可能な地域のつくり方――未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン

  • 作者:筧裕介
  • 発売日: 2019/05/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 非常に良い本だった。これまで住民参加型の地域づくりに関わる中、様々な場面で得てきた断片的なピースを一本串を差して整理整頓していただいたような、そんな爽快感があった。

 本書は全ての基礎自治体の職員が読むべき教科書的な本と言っても過言ではないと思う。その理由は2点。1つはSDGsと地域づくりとの関係性が整理されていること。SDGsは目標年度まであと10年を切っている。にも関わらず、自治体職員にもSDGsはまだまだ身近な、自身に関連する存在になっていない。本書の具体的な事例をもって、SDGsとはまさにローカルな身近な地域づくりであるということが理解できる。もう1点は、コミュニティの弱体化があらゆる課題の要因であることをSDGsのロジックで解説している点。本文に指摘のあるとおり、あらゆる課題の要因にコミュニティの希薄化が関係している。コミュニティ施策は基礎自治体にとって第一の目的・目標に掲げられるべき課題であることが理解できる。

 地域は生命体と同じく常にその構成要素は流動するというのが本質である。排他的な地域は代謝が進まない。代謝が進まないということは腐っていく、持続可能ではないということだ。本書では、4つの「生体環境」という表現で、持続可能な地域を実現するために必要な取組が紹介されている。

  ①地域の様々な立場の人々が対話、協働する力を持ったコミュニティづくり
  ②地域で暮らす人がチャレンジできる環境であること
  ③地域コミュニティの次世代を教育すること
  ④地域を未来をうつしだす未来ビジョン(計画)づくり

 いずれにおいても、先般読み終えた「SDGs時代のパートナーシップ」と関連し、人々の協力関係が新たな価値を生み出すこと、あるいはその協力関係そのものが、マネーに代えられない価値であること(後述)であることをを示している。さらに4点の紹介と、あわせて参加・協働・共創を生み出すためのスキルが6つ紹介されており、その全てが実践的かつ基礎知識としてマスターすべきものと感じた。

  技術1 地図を書く技術
  技術2 対話の場をつくり技術
  技術3 声を聴く技術
  技術4 未来を表現する技術
  技術5 問いをたてる技術
  技術6 発想する技術

 終章には、現在の貨幣資本主義に依存しない生活がなぜ、依存する生活よりも豊かであるかが論じられている。この世には、マネーで買えない価値があるはずなのだが、マネーだけで一見不自由のない暮らしが実現されており、その事実が忘却されている(今私は東京に暮らしているのだが、よりそのことを実感する)。現代は、お金で買えない「信用」「信頼」「協働」の価値が少しずつ見直されはじめている。
 労働に関してもただマネーを得るためだけに時間を切り売りしているという感覚では、全く面白みがなく、継続性もない。この先大きな経済成長を見込めない我が国では、むしろ生産性や効率性を高めることよりも、いかに「社会に役立ったか」等を価値として享受すべきだと改めて強く感じた。

 以下アイディアとして・・・地域課題をSDGsイシューマップにマッピングする手法を、自治体内部の総合計画や事業計画に取り込んではどうか。本書で指摘のあるとおり、現実の課題は相互に関連しあっており、実は組織の縦割りで本質的に解決できる課題は少ない。自治体職員は幅広な視野を持って業務にあたる必要があるが、縦割りの壁に阻まれている。本来縦割り間の連携は、特別職、あるいは局・部長級の幹部が対応すべきことだとは思う。しかし実際はうまくいっていないケースばかりだと思う。そんな縦割りを打破する取組として、ボトムの職員レベルから、課題を包括的に把握するしくみを作ってはどうか。
 終章でも例示されていたが、「分業」は、確かにアウトプット量は効率化され、生産量は増えるかもしれない。しかしながら、働いている労働者は、分業された工程がなんのための業務かわからず、働いているかを見失いやすい。管理者側の工程全体把握のみではうまく機能しないのならば、ボトムの職員の時点で全体把握を仕組み化させたほうが、よっぽど組織の横連携がうまくいくのではないかと考える。