よんだほん

本の内容をすぐ忘れちゃうので、記録しておくところです。アフィリエイトやってません。念のため。

SDGs時代のパートナーシップ:成熟したシェア社会における力を持ち寄る協働へ

何度かお世話になっている川北秀人さんが編集に関わっている本。
前半の内容がもはやすでにうろ覚え。言い訳だけれど、子どもが生まれてからなかなか本と向き合う時間がとれなくて、読み終えるのにかなり時間がかかってしまった。


 本書で繰り返し強く述べられているのは、「SDGsを達成するためにはパートナーシップが不可欠である」ということ。このパートナーシップというのは、行政界隈ではいわゆる協働と呼ばれている。そしてパートナーシップ自体の定義はかなり広い。本書内で紹介される各種事例も様々なパートナーシップのあり方であり、その姿は一様ではない。パートナーシップの定義をあえて私自分の言葉に言い換えて記しておくと、「人や人、組織や組織など、立場、役割、得意分野の異なる様々なセクターが、自らの得意分野を持ち寄って1つのゴールに向かう」といったところか。

 現代社会は、予測不可能、不確実な社会であり(=VUCA)、何が起こるかわからない。新型コロナウイルス感染症も、あれよあれよという間にパンデミック扱いになってしまった。本書内でも確か記述があったと思うけれどダーウィンの言葉で「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」というものがある。予測不可能な出来事に変化(対応)できる者、地域、あるいは組織が、サスティナブルなのだと理解できた。

 そして変化を生み出すためにはパートナーシップを軸とした異なるセクター同士の学び合いが必要なのだとも理解できた。予測不可能な社会において、おそらく誰一人正解など持ち得ていない。あるのは「比較してうまくいっているものかそうでないものか」なのではないか。そうだとするならば、お互いの知見を持ち寄ったほうがよりよいものができるに決まっている。そしてその際重要なのは、失敗や取組レベルの高低を責めない社会であることだ。チャレンジできるものを大切にする人や地域が、変化し、生き残るのだと思う。別記事になるが、イノベーションを引き起こすためには、失敗を奨励するという考え方もある。
dentsu-ho.com


本書に対して大いに賛同した上で、思ったことを記しておくと

(1)失敗できない行政が生み出す価値とは
 よく行政は失敗できないと言われる。失敗すればマスコミから散々に叩かれる。そのことが行政セクターのイノベーションを阻害しているんじゃないかと思うことがある。別に市民の皆さんもっと行政のことを優しく見守るべきでしょ、甘えさえろという話ではなく、緊張感のある関係性が築かれていない。行政のチャレンジが仮に失敗したとして、もちろんアカウンタビリティを果たした上で、よりよくするにはという視点の議論をセットにした、緊張感と建設的な要素を併せ持つ関係性。自身のまちをよりよくしたければこのパートナーシップを形成しなければならないのでは。

(2)パートナーシップの調整コストというネガティブ意見にどう対応するか
 パートナーシップの形成には、目的目標のすり合わせ、各セクターの利害等が絡み、単独セクターで物事に当たる場合に比べて事態が複雑化する。各セクターは、確実に成就するかわからない協働の調整に、なかなか時間や資本を割くことができないというのが実情では。本書内にあった行政のNPO等に対する協働という名の下請け発注も、そういった側面はないか。行政が仕様書として発注するほうが、調整コストが圧倒的に少なく、品質に一律性を担保できるのではないか(あるいはそう思われていないか)。パートナーシップ調整コストと、パートナーシップがもたらすSDGsへの効果とを対比したとき、それでも後者に注力すべきと訴えるポイントはあるか。(自分が訴えたいのだが、そのポイントが分からない。)

(3)学び合いのプロセス構築に、しくみだけでアプローチできないのか。
 各セクターのマインドにかなり依るところがないか。本書の事例にもあるとおり、長期間の信頼構築などがパートナーシップ形成に繋がったものも多い。自分自身が、情報共有会等を企画運営しても、前向きに学ぶ方は学ぶし、学ばない方はどこまでいっても学ばないのではないかと思える。後者の人々にどのようにアプローチしていくべきか。