- 作者: 鈴木美央
- 出版社/メーカー: 学芸出版社
- 発売日: 2018/06/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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公共空間のあり方を考えるための参考図書再び。
マーケットは、海外では当たり前・日常の存在。豊田でもマーケットをやってるけど、イベント感が強いようにも思える。よく考えてみれば、台湾の夜市だとかも公共空間を利用したマーケットなのだけれど、どうも毛色が違うように思う。海外で行われているのは「日常の営み」。
日本では、マーケットがこれまでになかったかといえば、いわゆる「市」が開催されていた。日本全国の至るところに地名として残っているのが証左。しかし現代の日本では、いつの間にやら公共空間を占拠することが、基本的には良くないことだという価値観になっているように思う。というか僕は、公共空間が交通優先になってしまっているのは、ぶっちゃけ警察が真面目すぎるのが悪いと思う。例えばロンドンでは、所謂警察協議は難航しないらしい。それはなぜかというと警察権が市長権限に下に置かれているからだそう。行政と警察が一緒になってていいのというギモンが湧くけれど、素直に羨ましい。
さて、マーケットの効果が本書では15ほど挙げられているけれど、個人的なフィルターをかけると以下の8つぐらいになった。
【マーケットの効果や機能】
①公共空間の利活用によるエリア資産価値の向上
②生産者と消費者間の直接的なコミュニケーション(特にファーマーズ系)の形成
③地域住民間のコミュニティ形成
④出店者同士によるコミュニティ形成、コラボレーションによるイノベーションの創出
⑤(場所やマーケットの性質にもよるが)生鮮食品等の販売による地域住民の生活インフラとしての機能
⑥地域経済の循環
⑦近隣店舗への相乗効果
⑧非日常感の創出で何より楽しい!
また、本書の後半はマーケットの具体的な作り方のノウハウがまとめられている。
コンセプト設定や、仲間の集め方は、いわゆる市民活動畑でどこでも口酸っぱく言われていることが本書でも述べられている。具体的には「楽しいこと」「負担のないこと」。さらに筆者は、それを一言で「参加するその人にとって心地よいか」という表現を使っていたが、これはかなり自分の中で腹落ちした。負担がないというのは、仕事の量が少ないとか、関わり方が少ないとかそういうことではなくて、その人にとって良いレベル感=心地よいかどうか。当然自分は、人によって求めている参加の度合い(レベル感)が異なるということは理解していたが、この表現(心地よい)が今の自分の中ではかなり正解に近い。
それから、出店者集めの際には、出店者の数にこだわるのではなく、コンセプトにあった出店者かどうかにこだわったほうが良いというのも、当然といえば当然だが、確かにと思わされた。「小さくはじめて大きく育てていく」ことがマーケット運営にも求められる。そのためには、マーケットのコンセプトがぶれないような設定にしなければならない。
最後に空間の設定。ただ単に出店者をざっぱに並べれば良いというのではなく、導線等を意識して「心地よい」「コミュニケーションが誘発される」空間を設定しなければ、続けられるマーケットに育たない。確かに、空間が心地よいところはいつまででも居たいと思わされる。ラグビー期間に駅前でやっていた豊田市のマーケットイベント|STREET & PARK MARKET、2週見て回っちゃったもんね。
本書を通じて、小さくはじめて大きな効果が期待できるマーケットという手法は、公共空間利用における最強ツールの1つであると強く感じた。