いま、「変える」をテーマに仕事をしている。いわゆる経営理念的なものを作るセクションにいて、組織をこれからの時代を生き抜くものにバージョンアップすることがミッションである。ただ、どうにもお題の抽象度が高く、なかなかどうして「変える」が必要なのか、伝わりにくいと感じている。
本書によれば、変化には後述する4つの「抵抗」があり、むしろそちらを取り除かなければ、アイディアがどれほどまでに素晴らしいものだとしても、またいかにそのアイディアの素晴らしさだけを伝えても、相手には動かすことはかなわないという。
「惰性」
自分の知っていることに固執しようとする力/よくわからないアイディアに対する不信・拒絶/変化よりも不変を、未知よりも既知を好む傾向/現状維持バイアス
「労力」
変化を起こす(受け入れる・実行する)ために必要なコスト、最小努力で済ませようとする傾向、具体的にどうすればわからない「茫漠感」
「感情」
提示されたアイディアそのものが生み出す脅威、選択を誤ることに対するリスク
「心理的反発」
アイディアによって変化させられようとするプレッシャー、アイデンティティを覆すようなアイディア
人間はそもそも、ネガティブな感情に対して、敏感に反応する生き物である。そのため、アイディアを正面から訴えること(本書では、「燃料」と表現している)は、効果がないわけではないが、それだけで突破するには、何度も何度も訴え続けなければならない(燃料を注ぎ込まなければならない)。しかし、「抵抗」は、相手側の思考であるがゆえに見えづらいところがあって、我々はついつい、燃料頼みで変化を起こそうとしてしまう。
本書ではさらに、それぞれ4つの抵抗に対抗する手法が紹介されている。
「惰性」
◯アイディアに慣れさせる
⇒反復して何度も繰り返す(単純接触効果)、小さく始める、提案を典型的なものに似せる、例えを使う、慣れるまでの時間を与える
◯相対性を取り入れる
⇒極端な選択肢をつくる、尖った選択肢を基準点にする
「労力」
◯ロードマップをつくる
⇒行動の実施方法、タイミング、きっかけを設定し、知らせる
◯行動を簡素化する
⇒フローをつくって改善する、新しいアイディアをデフォルトの選択肢にする、ノーと言いにくくする
「感情」
◯なぜ抵抗するのかにフォーカスする
◯お試しができるようにする、決定を覆せるようにする
「心理的」
◯変化を無理強いしない
◯「自己説得」へ誘導し、メンバーの前で共有させる
◯イエスを引き出す質問をする
◯ステークホルダーとともにつくる(コ・デザイン)
監訳者の言葉にもあるとおり「How to think(ハウツー)」本として、体系立てて非常にわかりやすくまとめられており、早速生かしたいと思える1冊。